8月31日の原子力防災訓練・避難計画等に関する質問・要望書
福井県知事 西川一誠 様
福井県安全環境部危機対策・防災課 御中
高浜原発3号機で重大な事故が起こったという想定で、8月31日に原子力防災訓練が実施されようとしています。防災訓練は実際に起こり得る厳しい事故時に必要な避難をできるだけ忠実に模擬したものでないと意味がありません。この点、今回の訓練では、事故経過の時間想定、避難の範囲(特に県外避難の計画がないこと)、避難に関与する車両等があらかじめ準備されていることなどで、実際の避難とはかけはなれています。これでは防災訓練の目的にある「住民避難体制の確立」とはほど遠いものとなっています。
そもそも福井県の避難計画自身に多くの問題点がある中で、拙速に防災訓練を実施することは、あたかも再稼働の準備が進んでいることをアピールするかのようです。
さらに、福井県民はもとより、事故時に同時避難となる京都府とはほとんど調整もなく、避難先の兵庫県・関西広域連合や関連自治体・住民には説明もありません。関西広域連合は、8月5日に私たちが申し入れた時点では、福井県から防災訓練についての詳細は何も聞いていないと述べていました。
また、高浜町・おおい町・小浜市・若狭町の避難先となる兵庫県では、31日同日に南海トラフ地震を想定した防災訓練が実施されます。なぜこのような日が選ばれたのでしょうか。このことからしても、今回の原子力防災訓練の意図と実効性に大きな疑問を感じます。
私達はこの間、兵庫県を中心に避難先自治体を訪問し、避難者受け入れの状況等を聞いてきました。避難先体育館の割り当て等のマッチングのみが優先され、福井県・避難元自治体との連携が取られていない実態が明らかになっています。このような状況では、避難計画で住民の安全を守ることはできないと強く危惧しています。
これらのことを踏まえて、以下の質問事項と要望事項に答えてください。
【防災訓練に関する質問事項】
1.高浜町で回されている実施要領では、今回の目的に「住民の原子力防災に対する理解の促進を図る」がありますが、訓練の想定や内容について住民にはいつ説明するのですか。
2.今回の訓練では、車両等の手配が全て整った状況で開始されることになっています。実際の事故を想定すれば、「事前準備なし」で、「避難命令と同時に」、バス配車要請、要員配置要請等々が行われなければ意味がないのではないですか。
3.実際の避難先施設(体育館等)までの避難訓練ではなく、スクリーニング地点等で訓練終了としているのはなぜですか。
(・小浜市の場合は、スクリーニングポイントの若狭町上中庁舎までで避難訓練終了。
・高浜町の場合は、きのこの森、「舞鶴東IC」、舞鶴港、までで避難訓練終了)
4.高浜町の場合、訓練の多くは「きのこの森」でスクリーニングを実施し、終了することになっています。「きのこの森」は高浜原発から約9�の地点です。スクリーニングは30�付近で実施する計画のはずですが、これはなぜですか。
5.スクリーニングは車両・住民全員に対して実施するのですか。その結果は、住民一人一人に書面で知らされるのですか。
6.除染で出る汚染水の処理はどうするのですか。住民の除染はどのような方法ですか。
7.要援護者の避難訓練は、病院や施設でわずか数名しか実施しないのはなぜですか。
(若狭高浜病院の場合は救急車1台で2名の避難、杉田玄白記念公立小浜病院も数名のみ等)
8.自衛隊や海上保安庁も参加し海上輸送の訓練が予定されています。高浜の音海地区では、住民の漁船1隻に6名が乗って、沖に停泊中の海上自衛隊の掃海艇「すがしま」に移動することになっています。津波や悪天候では漁船で沖に出ることは不可能です。訓練当日が「悪天候中止」となっているように、この計画に実効性があるのですか。
9.今回の防災訓練の前提となっている「事故想定」は何を元に決めたのですか。なぜ、関西電力が報告している重大事故を想定しないのですか。
【広域避難計画に関する質問】
1.広域避難については、県内避難と兵庫県への避難等各地区ごとに2通りの避難先が確保されています。
・しかし、要援護者の避難先は県内避難のみです。これはなぜですか。
・そのことを兵庫県・関西広域連合にいつ伝えたのですか。
2.在宅の要援護者の避難先は5�圏内までしか策定されていません。30�圏内の在宅の要援護者の避難先も策定すべきではないですか。
3.福井県が7月29日公表した「避難時間推計シミュレーションの結果」には多くの問題点があります。同時に避難する京都府民等については考慮せず、福井県民のみを対象としたのでは避難時間を予測することにはなりません。また、実際の避難先までではなく、30�圏外に出た時点までしか計算していません。さらに、要援護者の避難時間がまったく考慮されていない等々。
これらの点を踏まえて、避難時間推計シミュレーションをやり直すべきではありませんか。
1.今回の防災訓練は、「住民避難体制の確立」にはほど遠い訓練であることを表明すること。
2.防災訓練の内容・結果及び8月26日に改定された「広域避難計画要綱」について、福井県民はもちろんのこと、事故になれば同時に避難することになる京都府や、避難先である兵庫県・関西広域連合に対しても、各自治体・住民が参加できる公開の場で説明し議論すること。
3.住民の生命と安全を守る避難計画ができない限り、高浜原発・大飯原発の再稼働に同意しないこと。
2014年8月29日
避難計画を案ずる関西連絡会