原子力資料情報サービス(NIRS)による最新報告:放射能は女性にとってより有害である

NEW BRIEFING PAPER FROM NIRS:
ATOMIC RADIATION IS MORE HARMFUL TO WOMEN

2011年10月18日
原子力資料情報サービス
プレスリリース

即時公開用
米国・ワシントン発
連絡先 メアリー・オルソン NIRS +1-828-242-5621, maryo@nirs.org
    ダイアン・ダリーゴ NIRS +1-301-270-6477, dianed@nirs.org

原子力資料情報サービス(NIRS)による最新報告:
放射能は女性にとってより有害である

女性は男性と比べて電離放射線の影響によってより深刻な害を被る。本日原子力資料情報サービス(Nuclear Information and Resource Service)が発表した報告書は、同量の放射線被曝をした男性に比べて女性のほうが50パーセントもの割合で発ガンと致死率が高いことに焦点を絞っている。確かに男性も電離放射線被曝によって発ガンし、死に至ることはあるが、被害の深刻さにおいてのジェンダーの差異に関しては、これまで過小報告されてきた。

この結論を導いたデータは、米国科学アカデミーの2006年の報告書「BEIR VII」である。「BEIR VII」は、電離放射線の生物学的影響に関する一連の報告書の第七版である。女性が放射線被害をより受けやすいことが当該報告書の主題ではなかったため、この懸念されるべき事項に注目が集まることはなかった。

NIRS(原子力資料情報サービス)は、世界的な「ホットスポット」である地域の団体、すなわち日本のグリーン・アクション、ウクライナのエコクラブ、アメリカ・ペンシルバニア州のスリーマイル・アイランド・アラートと共同で報告書を発表している。報告書(英文)は以下のURLから:
http://www.nirs.org/radiation/radhealth/radiationwomen.pdf

原子力資料情報サービス(NIRS)は、このデータに改めて注目している。なぜなら核施設の近辺の住民たちは、定期的に空気中・水そして土壌に事故が起こらなくとも、平時に放出される放射能に晒され続けることになるからである。無論、スリーマイル島、チェルノブイリや福島の中でも壊滅的な事態に影響された地域に住む人たちはそれ以上の危険に晒されていることになる。

「このデータ自体驚くべきものであるが、米国科学アカデミーからもこの報告がなされていないという事実も衝撃的である。そのデータは女性の発ガン率、発ガン致死率が一貫して50パーセントも高いことを示している。このような率による偏よった影響は驚くべきことだ。より深刻な危険に晒されやすい人々の防護のために、さらなる調査と行動が必要である」とNIRS所属の生物学者であるメアリー・オルソン氏は語った。彼女は今日発表された8ページの状況説明書の執筆者でもある。「明らかに男性も被曝によって発病し死亡する。ただ、同じ値の被曝で女性はより深刻な被害を受ける。予防原則の観点から、まずは防護をし、それから研究がなされるべきなのである。」

周知の事実であるが、子どもは被曝によって最も深刻な被害を受ける。電離放射線が子どもに害を与えるメカニズムは、第一により小さな容積の体にとっては同量の放射線が大人にとってのそれより高度の被曝を意味する。第二に細胞分裂のより活発な子どものDNAは、放射線の危険に晒される確率がより高いことにある。

オルソン氏は、「女性もまた放射線被害をより受けやすいという事実に関しては、複数のメカニズムが組み合わさったものである可能性があり、更なる研究が必要とされる」と語った。「体容積は一つの要因かもしれないし、また、生殖器の組織は放射線に非常に敏感であり、女性の体におけるそれらの組織の体内比率は男性に比べて高い。米国科学アカデミーのデータは限られていていて、外部被曝しか考慮していない。我々が直面している実際の状況を描写するためにも、内部被曝に関しても考慮されなくてはならない。

スリーマイル・アイランド・アラートの理事長であるエリック・エプスタインによると、「1979年3月30日、州知事リチャード・ソーンバーグ氏はスリーマイル島から5マイル圏内の就学前の子どもと妊婦の避難を勧告した。メルトダウン後に収集されたデータは、放射線被曝と女性と子どもの健康への影響の間の明確な結びつきを示している。」

京都の市民グループ、グリーン・アクションの代表アイリーン・美緒子・スミスは、「この情報は福島にとってきわめて重大なタイミングで届いたといえる。子どもを持つ多くの若い女性たちが、避難したくても経済的な手段を持たない状況にあるからである。最も重篤な危機に瀕しているといえる子ども達、妊娠中の女性たちとその他の女性たちは日本政府が経済的補償を行わないためにその場を離れられない状態にある」と述べた。

「チェルノブイリ事故の壊滅的な結果にも関わらず、ウクライナのフメリヌィーツィクィイ原子力発電所で計画中の第三・第四号炉で重大事故が起きた場合の影響は、少なくとも実際の10分の1と過小に見積もられている。その見積もりによれば、例えば重大な事故の最悪の場合でも、一部の牛乳を廃棄せざるを得なくなる程度のことだとしている。しかし発表されている研究によれば、女性への影響は以前考えられていたより深刻なものになることがわかる。そしてそのことはフメリヌィーツィクィイ原子力発電所(KhAES)第三・第四号炉の安全評価にも組み込まれなければならない。」とウクライナ、ロブノ市のエコクラブの議長であるアンドリーマー・ティニーク氏は述べた。

「放射線規制当局は、特定の生物の種の保存は子どもと女性の防護なくしてはありえないことを覚えておかなければならない。これは『女性特有の問題』ではなく、男性たちにとっても女性の健康は必要だからだ」とオルソン氏は語る。「同時に私は、女性の知る権利・自分たちを守る権利・そして法の下の同等の防護への権利に関して深く憂慮している。電離放射線に関しては、現行と同様の放射線規制を適用することはもはやできないことを意味する。」

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原子力資料情報サービス(NIRS)は、この報告書の作成者であるメアリー・オルソンと、NIRSの放射性廃棄物プロジェクト担当であるダイアン・ダリーゴ、そして国際的に著名な放射線の専門家であるロザリー・バーテル博士、そしてスリーマイル・アイランド・アラート議長であるエリック・エプスタインによる説明会を10月27日(木曜日)、米国東部標準時の午前10時に開催する。(ワシントン DC)メール・電話による質問のための連絡先は maryo@nirs.or, または+1-828-242-5621

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日本語訳:グリーン・アクション

なお、報告書の日本語訳は11月1日発行を予定している。発行の記者会見は、東京で行われる「経産省前の女の座り込み」に合わせて行われる予定。記者会見の場所と時間についての連絡先はグリーン・アクションまで:
Tel: 090-3620-9251 (アイリーン・美緒子・スミス)