青森県知事宛; 六ヶ所再処理・アクティブ試験の過程で浮上した問題・疑問に関する質問書

貴職は、2006年3月に日本原燃とアクティブ試験にあたっての安全協定に調印し、同試験の開始を承認しました。その結果、同試験が2006年3月31日から実施され、その過程でさまざまな問題が生じています。

現在、日本原燃はアクティブ試験を2008年2月に終了すると見込んでおり、その後すぐにも本格操業に入ることを予定しています。その際は、青森県および六ヶ所村と新たな安全協定を締結しなければなりません。つまり、貴職が安全協定に署名しない限り、六ヶ所再処理工場の本格操業に踏み切ることはできません。

その貴職の権限の根拠は、県民の安全、生命と健康、財産を守るべき立場からもたらされているはずであり、現に貴職はそのような立場にあることを国に対して公的に表明しています。それゆえ、安全協定の検討に入る前に、国の評価とは独自に、現在までに生じ、そして今後起こりうる安全性に係る問題点・疑問点を総ざらいし、少なくとも青森県民に説明する責任があります。

液体状・気体状の放射性廃棄物は放出されると、直接または食材などを通じて、県境を越えて広がります。私たちは、全国の人たちに貴重な食材を供給している青森県の農漁業や三陸の漁業の発展を心から願っています。また、危険な「核のゴミ」が増え溜まり続けること、そして県民や国民の安全が守られないような事態が到来するおそれのあることを、深く憂慮しているものです。

このような立場から私たちは、これまでの過程で浮上している疑問点を以下の質問事項としてまとめました。貴職の責務を果たすためにも、新たな安全協定に関する検討に入る前に、これら基本的な疑問点に公的に答えていただくよう強く要請します。

回答は文書で2008年1月11日までに行い、その後1月15日に直接説明・議論する場を設けてくださるよう要請します。

(回答は、最後に記入の連絡団体のうち花とハーブの里及び美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(略称:美浜の会)へ提出してください。美浜の会には次のメールアドレスにお送りくださるようお願いします:mihama@jca.apc.org

 

質 問 事 項

1.放射能の大量放出について

アクティブ試験の過程で、日本原燃は大気と海洋という人々の生活圏に大量の放射性物質(放射能)を撒き散らしてきました。放射能はたとえ微量でも人体に害になることは国際的、科学的に認められており、このような行為に対する危惧が青森県民だけでなく、広く全国の人々の間に広がっています。

  1. (大量の放射性毒物を撒き散らすことをなぜ貴職は容認しているのですか。
  2. 日本原燃はクリプトン85,炭素14およびトリチウムについては全量を放出することを公言しています。貴職は、なぜこれらを回収する技術を適用するように指示しないのですか。現行安全協定第5条でも、放出の「低減措置の導入を図るものとする」と規定されていますが、これをなぜ適用しないのですか。
  3. 青森県の核施設からの海洋放出について、再処理工場を除く3施設の安全協定では、国が原発などに適用している濃度限度の10分の1の濃度を規制値として採用しています。それなのに、なぜ六ヶ所再処理工場については濃度規制を適用せずに、年間放出量だけで規制する方式を採用しているのですか。
  4. 本格運転に入ると、格段に多くの放射能が放出されることになりますが、そのことについてはどのように考えていますか。

2.「攻めの農林水産業」との関係及びラ・アーグの事実に照らした日本原燃の過少評価について

貴職は今年7月19日の「『攻めの農林水産業』推進大会」において、「なによりも基本である、日本一健康な土、日本一いい水による安全・安心で高品質な青森産品づくり、これを一層強化したい」と、知事基調講演の最後で語っています。この趣旨からすれば、土壌や海水を放射能で汚染する再処理工場の運転など、絶対に容認しようがないのではありませんか。

現に、フランスのラ・アーグ再処理工場周辺では、土壌や農産物や海産物からセシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129およびプルトニウム239・240などの核種が有意なレベルで検出されています [注1]。青森県は2006年2月7日の監視委員会資料[注2]で、食品中の核種濃度を計算した予測値を公表していますが、その場合、農産物ではトリチウムと炭素14以外の核種は検出限界以下になっています。ところがラ・アーグ周辺の実測値はこのような予測を完全に覆しています。例えば、ミルク中のストロンチウム90は青森県の予測値の3825倍です。海藻中のストロンチウム90は、青森県の予測値の1075倍になっています(付属資料1)。

また、海洋に放出された放射能は拡散して薄まるので問題はないと日本原燃は推測していますが、ラ・アーグ周辺では100km離れた海域でも海産物中の濃度はそれほど落ちていません(付属資料2)。六ヶ所再処理工場の放出口から100kmの海域は、岩手県久慈市の辺りに該当します。さらにこのラ・アーグでの傾向からは、宮古市など三陸沿岸の一帯でも、セシウム137などの放射能が海産物から有意なレベルで検出されることは十分予測できることです。

  1. 青森県の予測は基本的に日本原燃の計算方式に基づくものです。その結果が、ラ・アーグでの事実に照らして余りにも過少評価になっていることは、日本原燃の被ばく評価方法にまったく信頼性がないことを示しているのではありませんか。
  2. もし本格運転となれば、ラ・アーグのような汚染が六ヶ所周辺から三陸にかけてでも起こるのは必至です。土壌や水が放射能で汚染されるという事実についてどのように考えますか。放射能に汚染された土壌や水がどうして「日本一健康」、「日本一いい」と言えるのでしょう。このような農産物を人々は喜んで買うとお考えになりますか。

[注1]フランスGRNCの2004年報告書(発行:2006年10月)。GRNC(Groupe Radioécologie Nord-Cotentin)は1997年にフランスの環境省と厚生省が合同で設置。コジェマ社、海軍および民間の研究機関などによって構成されているグループ。

[注2]平成17年度第4回青森県原子力施設環境放射線等監視評価会議監視委員会(2006年2月7日) 資料2・表1、及び、「添付:再処理工場の操業に伴う環境試料及び空間放射線量率への施設寄与分(増分)の計算の概要について」別表1。

3.被ばく線量0.022mSvおよび関連事項について

日本原燃は年間の最大被ばく線量を0.022mSv(ミリシーベルト)と評価し、これを絶対化するような扱いをしていますが、この評価についてはたとえば次のような疑問点があります。これらの各疑問点について、国や日本原燃の評価ではなく、貴職の見解を求めます。

  1. 被ばく線量は毎年同じ数値になっていて、放射能の年々の蓄積が事実上考慮されていません。微量放射能については蓄積が重要な問題になるのではありませんか。現に、フランスとイギリスの再処理工場周辺では蓄積が問題になっています。
  2. 大気放出された放射能による被ばく評価は気象指針に基づいています。ところが、フランスのラ・アーグ周辺でクリプトンの地表濃度を実測した結果、気象指針はとくに排気筒に比較的近い箇所で実測値より著しく小さい値しか与えないことが明らかにされています[注1]。この事実は前記GRNCによってすでに2000年に確認され、気象指針ではなく実測値に基づく別の方法を採用することで合意されています。このフランスの資料は、青森県の前記2006年2月7日付監視委員会資料[注2]・参考資料・別紙3図4でも引用されているものです。この点はどのように評価していますか。

    [注1]Comparaison des modèles gaussiens de dispersion atmosphérique de Doury,de Pasquill et Caire avec les résultats des mesures de Krypton 85 réalisées autour de l’usine de retraitement des combustibles irradiés de La Hague, IPSN, Rapport DPRE/SERNAT 00-21(2000).

    [注2]質問項目2の[注2]の資料の参考資料・別紙3・図4。

  3. 0.022mSvの評価を与える一つの重要な基礎として、ヨウ素の海藻などによる濃縮係数をどうとるかがあり、日本原燃は海藻では2,000ととっています。ところが、原子力安全委員会の原発に対する指針ではこれを4,000とするように定めています[注1]。また、フランスのGRNC2004年報告書の数値から求めた濃縮係数は約25,000であって日本原燃の値の10倍以上にもなります[注2]。このような事実についてどのように評価しますか。

    [注1]「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に対する評価指針について」別記4.海産物の濃縮係数。

    [注2]希釈度0.6の地点で、海藻中のヨウ素129濃度が4.823Bq/kg生、海水中の濃度が0.000194Bq/リットルという測定値より計算。

  4. 青森県はモニタリングおよび線量評価の対象となる核種として、東通原発に関してはヨウ素131を取り上げていますが、六ヶ所再処理工場に関してはヨウ素を完全にはずしています[注3]。これはなぜですか。

    [注3]質問項目2の[注2]の資料のうち、資料2の表1、表3、表4、表5。資料3の表1、表2、表3。

  5. 下北海域でサーフィンをするサーファーや海岸で遊ぶ子どもなどの場合、放射能汚染された海水から直接外部被ばくしたり、海水を飲むことによって内部被ばくしたりします。このような場合の年間被ばく線量は評価されていませんが、それについてはどうお考えですか。

4.作業員の内部被ばくについて

2006年6月に19歳の作業員の鼻腔からプルトニウムが検出されました。この場合プルトニウムは肺に侵入し被ばくさせたと考えるのが当然です。ところが日本原燃は、糞でプルトニウムが検出されなかったことを理由にして、内部被ばくはないものと判断しました。この場合、肺に入ったプルトニウムは必ず口腔に戻り胃腸にいたることが前提とされていますが、そのような仮定に根拠がないことは明らかです。

貴職はなぜこのような日本原燃の不当で非科学的な判断を容認するのですか。再処理工場内では、県民である多くの地元住民が働いています。このような姿勢では県民の生命・健康を守ることはできないのではありませんか。

5.高レベルガラス固化体の行方について

ガラス固化体の地下埋設処分場がどうなるか、まったく不透明な状況にあります。これまでたとえば滋賀県余呉町や高知県東洋町などが立候補しましたが、多くの人たちの強い反対に会って断念に追い込まれたのは周知の事実です。最近、青森県内でも漁業協同組合連合会がガラス固化体埋設処分場は風評被害を招くとして、最終処分場の県内誘致に反対することを決定しました。このような意思は普遍的な意思だと見なすべきではないでしょうか。

候補地を探すために国が新たな努力を始めたとは言え、ガラス固化体が青森県から運び出される現実的な見込みはないのが現状です。

  1. ガラス固化体が六ヶ所再処理工場内の現在の貯蔵施設に50年を越えて放置されることは十分にあり得るわけですが、そのことについてはどう考えますか。
  2. 現在の貯蔵施設の貯蔵容量は8235本なので、本格運転すれば8年で満杯になります。8年先に運び出せる見込みはまずないので、おそらく貯蔵施設を増設することになるでしょう。このようなことを繰り返すおそれがありますが、その点はどう考えますか。
  3. 現在のガラス固化技術はまだ試験段階であり、確実に高温でガラス固化されるという保証はなく、その場合欠陥固化体が製造される恐れがあります。欠陥固化体は地中埋設に耐えられないため、もって行き場がなくなります。そのことについてはどう考えますか。
  4. 青森県に高レベル廃棄物を置くことは認めないという立場であれば、これだけ不透明な状態で本格運転を認めることはできないのではありませんか。

6.高レベル濃縮廃液が溜まることの危険性について

ガラス固化技術自体がまだ開発段階にあることを考慮すると、危険な高レベル濃縮廃液が溜まる恐れがあります。イギリスの核施設検査局(NII)は爆発などの事態を避けるため、貯蔵は最大200立米以内に抑えるよう、イギリス核燃料公社(BNFL)に対し指示しています。しかし、日本にそのような規制はなく、現に東海再処理工場では400立米以上が常時溜まり続けています。

高レベル濃縮廃液は、地震等何らかの原因で冷却系統が故障すれば、間なしに沸騰しはじめ貯槽を破壊するおそれがあります。また、強い放射線による水の放射線分解で絶えず水素が発生するので、強制排気(掃気)の系統が故障すると水素爆発が起こるおそれがあります。そうなれば「ウラルの核惨事」ならぬ「青森の核惨事」によって、周辺地域ばかりか数百キロメートル離れた地域まで壊滅的な被害を被る恐れが生じます。

このような高レベル濃縮廃液が六ヶ所再処理施設に溜まる危険性についてどう考えますか。

7.耐震判断について

新潟県中越沖地震は原子力施設の耐震評価に根底から疑問を呈しました。その地震で明らかになったのは、活断層の見逃し・切り縮め、地震動の過小評価、さらに揺れとは別の地盤自体の直接的なズレ・不等沈下による破壊です。誰もが、これまでの耐震評価に強い不信感を抱くようになっています。

六ヶ所再処理工場で本格運転が始まれば、1年間に800トンの再処理によってPWR原発約9基分の放射能が蓄積します。地震動と地盤のズレによって高レベル濃縮廃液の冷却機能や排気機構が壊されると広範囲に壊滅的な被害が及びます。原発よりもいっそう厳格な耐震評価が必要になることは明らかです。

ところが、日本原燃の新耐震指針を受けたバックチェックでは、六ヶ所敷地内を走る断層を活断層ではないとして切り捨てています。また、特に日本原燃が「大陸棚外縁の断層」と呼んでいる80〜100kmの海底断層をやはり活断層ではないとして無視しています。この海底断層については現在調査中で来年4月以降に調査結果がでるはずなのに、結論を先に与えています。これでは調査結果もあらかじめの結論に従属するものにしかならないでしょう。また、地盤のズレ・不等沈下についても、柏崎刈羽原発ではまだ調査中で全貌が明らかにされていません。それなのに、そのようなズレ・不等沈下はほとんど起こらないと決めつけています。全体に中越沖地震が明らかにした事実から真摯に教訓を学びとろうという姿勢が見えません。

このような日本原燃の耐震評価の姿勢、とくに、中越沖地震を受けて始めた海底断層の調査はまだ終了していないのに、問題はないとの結論を急いでだすようなやり方について、どのように考えますか。

8.情報の非公開について

六ヶ所再処理工場に関しては、情報があまりにもひどい非公開の状態にされています。トラブルを起こした物についても、配管やタンクの寸法といった基礎的な情報さえ公開しません。高レベル廃液の量や状態なども公開できないということです。ガラス固化体が随時何本製造されているかも公開されていません。このような状態では、安全性が確保されているかどうかの判断はいっさいできません。日本原燃のいうことを信用せよというのでは、県民の生命や財産を守る責務を放棄するに等しいのではないでしょうか。

  1. 青森県ではどれだけの情報が確保できているのですか。たとえば、報告書で白抜きになっている箇所の情報は入手しているのですか。
  2. たとえば、高レベル廃液や高レベル濃縮廃液が現時点でどこにどれだけあるかを把握していますか。さらに、10月に故障したエンドピース用バスケットの入っている酸洗浄槽の寸法は把握していますか。この寸法が公表されないとエンドピースがバスケットと槽の隙間から落ちたという日本原燃の説明の真偽を判断することはできません。しかし、日本原燃はこの寸法は非公開情報に属すると言っています。

9.新たな安全協定の締結について

これらの問題・疑問については、私たちに回答を提供するだけでなく、公開の場で議論する必要があるのではないでしょうか。その場では、県や日本原燃から疑問点に関する説明がなされ、それに対する質疑応答がなされて、県民や国民が納得できるようにする必要があるのではないでしょうか。県民や国民の中に、アクティブ試験過程で生じた多くの本質的な疑問があるような状態では、本格運転の安全協定を結ぶための検討に入ること自体ができないのではありませんか。

■特別質問:イギリスから返還されるガラス固化体の品質に関して

イギリスでつくられたガラス固化体について、地中埋設に耐えられないような欠陥のあることが内部告発されています[付属資料3]。もしこの欠陥が事実であれば、六ヶ所の貯蔵施設に固化体が返還されても、その固化体を施設から運び出すことができなくなります。つまり永久に青森県内の貯蔵施設に置かれる可能性が高くなります。

イギリス政府のNII(核施設検査局)は、ガラス固化体の品質には何ら関与していないと表明しています。それならガラス固化体の品質はどのようにして具体的に保証されているのでしょうか。六ヶ所の貯蔵施設で行う検査項目では内部の状態までは分からないと思われます。イギリス政府や日本政府がガラス固化体の品質をどう保証しているかについて、貴職はどのように把握しているのですか。

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