六ヶ所再処理施設での再度のプール漏えいを踏まえた青森県知事への要望書:再処理とめよう! 全国ネットワーク

青森県知事 三村申吾 様

六ヶ所再処理施設の使用済み核燃料貯蔵プールで、もう起こらないとされたはずの漏えいがまたも起こったことに、私たちは強い衝撃と憤りを覚えます。特に今回は驚くべきことに、規制当局である原子力安全・保安院(以下、保安院)が率先して、プールの保有水量さえ確保されれば、放射能を含む水が漏れ続けてもよいとの見解を示しました。このことに、私たちは強い危惧を抱くものです。これでは、資源エネルギー庁とは別の安全を守る立場で原子力を規制するはずの保安院が、自らの役割を放棄したことになるのではないでしょうか。

貴職はこれまで、青森県民の安全と安心を守る立場に立つことを表明されてきました。それならば、今回の保安院の見解とは、はっきりと一線を画すべきではないでしょうか。保安院の見解に対しては強く抗議し、その撤回を求めるべきではないでしょうか。さらには、保安院が本来の安全を守る立場に立つよう、他の立地県と連携して申し入れ等を行うべきではないでしょうか。

このような観点から、貴職に以下の点を要望します(なお、今回の漏えい事故に関する私たちの認識については、その後にまとめて記述します)。

要望事項

  1. 放射能を含むプール水の漏えいを容認するという保安院と日本原燃の見解に強く抗議し、それを撤回するよう申し入れてください。
  2. ウラン試験を直ちに中止するよう日本原燃に申し入れてください。

今回の漏えい事故に関する私たちの考え

  1. 7月15日に開かれた第15回「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」(以下、検討会)で、保安院の古西課長は、保安規定の改定申請はまだ受け取っていないものの、「漏えいがというよりはですね、繰り返しになりますが、保有水がちゃんと存在することが重要」との見解を何度も強調しました。日本原燃は7月12日付報告の中で、毎時10リットルまでの漏れなら監視をするだけでよいとの見解を示し、その根拠としてプール水の補給能力(毎時50立米)などと比較して十分小さいことを挙げています。保安院の見解は、この内容の保安規定を容認する考えをあらかじめ示したものです。さらには、漏えいでも毎時50立米未満であれば容認されるとの論理まで強調したものと理解できます。
  2. なぜこのような考えを強調したのでしょうか。プール建設時にコンクリート壁にステンレスプレートを内張りする際、大きく歪んだコンクリート壁に合わせるように、プレートを曲げたり、切り欠いたり、継ぎ足し部材を補充したりして、多数の「計画外溶接」をせざるを得なかった実態が今回改めて浮かび上がっています。この点は第15回検討会でも委員から改めて指摘されたことです。今回の漏えい事故は、日本原燃が「計画外溶接」等不正施工のすべてを把握できていないこと、今後も漏えいは避けられないことを如実に示しました。
  3. 保安院は、補修に関する設工認申請からわずか8日目の7月20日に早くも申請を認可しました。すると日本原燃は、認可の下りたその日に早くも漏えい箇所の補修作業を開始しました。ところが、過去の水中撮影画像では「計画外溶接」を見抜けなかったため、問題のある画像を再調査する計画になっていて、その調査はまだ終了していません。すなわち、漏洩の原因についてまだ明らかになってはいないのに、漏洩箇所を先に補修してしまおうというのです。これは、原因究明よりもスケジュールを優先させる姿勢が前よりもエスカレートしていることを示しているのではないでしょうか。
  4. また、漏洩が起こっても、それが必ずしも検知されるとは限らないという問題もあります。なぜなら、今回は新たな溶接線に沿って漏えい検知溝を追加設置することになっていますが、前回補修時には設置されていなかった可能性があります。そればかりか、一般に「計画外溶接」の裏に検知溝が存在するという保証はありません。例えば今回漏えいのあった切り欠き部分の溶接の場合、漏洩箇所よりさらに先端の部分には検知溝がありません。毎時10リットルを超える漏えいの場合には、巡視点検を3回に増やすと言っても、漏えい検知ができないのなら、巡視は意味をもたないこともあり得るのです。
  5. しかしいまさらプールを作り変えることもできないし、今後も起こる漏れをいちいち補修するのでは使用済み燃料搬入の妨害になり、コストも高くつき、何よりも再処理の運転スケジュールに差し支えます。だから漏えいは認めるしかないというように保安院は態度を変え、それを容認する論理を導き出したに違いありません。
  6. 古西課長は、「漏えいした水については低レベル放射性廃棄物としてしかるべき形で移送されておりまして、堰から出る形になっておりません」と検討会で強調しました。しかし、日本原燃の7月12日資料(添付-9)によれば、最後は海洋放出されるのは明らかです。その場合、原発の場合と違って濃度規制がはずされているので、高い濃度の放射能が放出される可能性さえ否定できません。下北海域から三陸海岸へと放射能汚染が広がることが心配されるのに、古西課長としては、そのような心配は一笑に付すべきことなのでしょうか。
  7. イギリスのソープ再処理施設では、プルトニウムや高レベル放射能を含む硝酸溶液が約83立米も漏えいしました。最新の高性能機器で構成された施設では漏えいなどあり得ないと信じる「新しいプラント」文化という「自己満足」のために、漏えいが長期にわたって見逃されていました。ところが、日本原燃の兒島社長は、この漏えい事故から学ぶという姿勢ではなく、六ヶ所再処理施設ではこのような漏えいはあり得ないと直ちに表明しました。これでは日本原燃にもすでに「新しいプラント」文化が蔓延していると言わざるを得ません。仮にソープのような漏えいが起こっても、古西課長流に言えば、溶液はセルという管理された堰の中に留まるので、容認されることになってしまいます。原発の場合なら、配管から放射能が流出していても、格納容器という堰にとどまるから容認されることになるのでしょう。
  8. 今回の漏えい事故によって、事態はウラン試験に入るより前の段階に引き戻されたというべきです。今後も漏えいが起こるような実態にあることを日本原燃も保安院も認めているからです。「使用済燃料貯蔵プールは、再処理施設本体とは物理的に切り離されている」(保安院:資料15−2−3)とはいえ、管理の面では日本原燃という一つの実体が全体に責任をもっているのです。それゆえに、再処理施設のどの建屋・設備についても、安全性に信頼のないことが改めて明らかになったというべきです。放射能の漏えいを容認するような規制当局の姿勢では、危険な再処理を行うことなどとても認められるものではありません。

以上

2005年7月26日

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