核燃料貯蔵プールの新たな漏洩およびガラス固化体貯蔵建屋の解析虚偽を踏まえた第15回「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」への要望書:要望書:再処理とめよう! 全国ネットワーク

主査 神田 啓治 様
検討会委員 各位 様

六ヶ所再処理施設の使用済み核燃料貯蔵プールで再び水漏れが起こりました。PWR用プールに直結しているバーナブルポイズン取り扱いピット(BPピット)で、コバルト60やホウ素などを含む漏洩水が検知されています。前回のプール水漏洩のとき、このピットでは水を全部抜き取って詳細な点検をしたはずです。いったいなぜ再びと、誰しも不可解な思いをもつことでしょう。

また、前回も貴検討会に要望したガラス固化体貯蔵建屋の序熱解析の虚偽問題についても、疑惑が少しも解明されていません。この問題では新たに、近藤正道参議院議員からの質問主意書に対する政府答弁書も出されています。

そこで、これらの問題について、貴検討会に以下の要望を行います。

1. 使用済み核燃料貯蔵プールの新たな漏洩事故について

貴検討会は、プール水漏洩問題を契機に2003年夏に設置され、同年9月12日の第1回会合以来、漏洩の原因や日本原燃の品質保証体制等について検討を重ねてこられ、日本原燃の「総点検」結果を承認して、ウラン試験に入ることを事実として承認されてきました。その結果、ウラン試験は昨年12月に開始され、現在も継続されています。

しかし、今回の漏洩という事実は、貴検討会の議論が再び出発点に立ち戻るべきことを意味しているのではないでしょうか。今年6月14日の日本原燃発表によれば、今回の漏洩個所は溶接部ではなく、ステンレス製内張り板を90度折り曲げた部分になっています。曲げ加工を行った時点またはその板を取り付けた時点ですでに何らかの欠陥が発生し、水圧によって拡大したと予想されます。すなわち漏洩の原因が、内張り板の製造・曲げ加工時または取り付け時に起因することはほぼ間違いないと思われます。

前回の経過の中で私たちは、日本原燃の姿勢があまりにもスケジュール優先であることを批判してきました。貴検討会でも、漏洩の原因として、建設当時のスケジュール優先問題や品質保証体制の欠陥などが指摘され、くり返し議論されてきました。しかし結局は、原因究明よりもウラン試験に向けて補修・点検を優先するという、日本原燃のスケジュール優先的な強引なやり方を、貴検討会は容認されてきたのではないでしょうか。

「総点検」とはいうものの、それによってプール壁の溶接の欠陥がすべて点検・補修されたわけではけっしてありません。まして、今回のような曲げ加工部の点検などはいっさい行われていません。予想もしなかった曲げ加工部での漏洩は、貯蔵プール全体の信頼性を失わせるものです。同時に、日本原燃の品質保証体制に重大な欠陥があることを再び思い起こさせるものです。

結局、日本原燃の建設時品質保証体制の欠陥についてまともな調査・検討もせずに、スケジュールを優先してウラン試験に入ることを容認した貴検討会の姿勢と責任が、今回の漏洩事故によって改めて問われているのではないでしょうか。漏洩事故が発生するとすぐにウラン試験を中止させるようでないと、貴検討会の存在意義自体が問われることになるでしょう。

そこで、次の点を貴委員会に要望します。

要望事項1

(1)
プールの欠陥や日本原燃の品質保証体制の欠陥について、根本から検討し直してください。
(2)
そのために、まずはウラン試験を直ちに中止させてください。

2. ガラス固化体貯蔵建屋での序熱解析の虚偽について

次に、ガラス固化体貯蔵建屋での序熱解析の虚偽問題に関し、近藤正道参議院議員の5月20日付質問主意書に対する6月3日付政府答弁書を踏まえて、貴検討会に要望します。この問題については、前回の第14回検討会にも要望書を提出しましたが、その第14回では、時間がなかったためにほとんど検討されませんでした。日本原燃は、解析の虚偽が起こった「原因」を「文献式の解釈誤り」だと称し、それと同様の誤りが他の施設・設備にないことは確認したとしています。しかし、その認識には問題があることを、私たちはすでに貴検討会への4月22日付要望書で示してきました。また、「文献式の解釈誤り」という説明には矛盾があることを、実際に指摘することもできます(後の要望事項の中で例を挙げて説明します)。

今回の原燃の解析虚偽の内容は、あるがままの事実に即して言えば、『設計変更によって温度解析の対象が変更されたのに、解析の結果であるガラス固化体温度などの解析値は変更前とまったく同じ値にされている』ということです。特に、第1ガラス固化体貯蔵建屋・西棟では、一度目は「施工性を高めるために」、二度目は「貯蔵の効率化」のために2種類の設計変更を行ったのに、2回とも温度の解析値をまったく変えていません。そして、これらが虚偽であったことを、日本原燃は1月28日に認めています。

そこで、これと同様の解析の虚偽が他の施設・設備には存在しないことが確認されているのかという点について、近藤正道議員から質問主意書で政府に確認が求められています。それに対する政府答弁書の回答では、「お尋ねの点については、特に確認していない」となっています。つまり、このような解析の虚偽が他に存在しないことはまだ確認されていないということです。それゆえに、「再処理施設の健全性」は確認されていないのではないでしょうか。

また、解析の虚偽を日本原燃は認めていながら、その責任については何も措置をとらないというのも奇妙なことです。

これらを踏まえて以下の要望を行います。

要望事項2

(1)
原燃の解析虚偽の内容、「文献式の解釈誤り」という説明について、事実に基づいて再検討してください。たとえば、原燃の説明には、次に記述するような矛盾があります。

原燃の平成13(2001)年7月30日付廃棄物管理事業変更許可申請書では、ガラス固化体貯蔵建屋B棟における「迷路部断面積」は4.0平方メートルと書かれています。ただし、平成15(2003)年10月1日付変更申請書で、4.0は2.7に変更されており、政府答弁書では、平成13年の4.0は2.7の誤記であったと書かれています。政府答弁書では、「迷路部断面積」とは「シャフトと下部プレナムを結ぶ導管の断面積から迷路板の面積を除いた面積である」と定義されています。結局、

 迷路部断面積=導管断面積−迷路板面積=2.7平方メートル

となり、原燃はこの面積評価に基づいて申請書を出したことになります。

他方、この「迷路部断面積」は、原燃の今年1月28日付第2資料での「流路断面積」に相当していると考えられます。その資料15頁で、「文献式の解釈誤り」によって「流路断面積を導管断面積自体(S1)と採ってしまったと記述しています。ところがその場合、「流路断面積」は、ほぼ9平方メートルに近い値になり、前記の2.7平方メートルとはずいぶんかけ離れた値になります。むしろ、2.7平方メートルは、資料15頁の「正しい解釈」と書かれている値に相当していると見なすことができます。

つまり、公式文書である原燃の申請書の記述に従えば、1月28日の「文献式の解釈誤り」の説明は成り立たないと思われます。結局、変更許可申請書では、「流路部断面積」を正しく計算していながら、ガラス固化体の温度等は設計変更とは関係なく、単に変更前と同じ値を記述しただけだというのが真相ではないでしょうか。

(2)
その虚偽と同様の虚偽のないことが他の施設・設備で確認されていないことを重視され、原燃が適切な措置をとるようにさせてください。
(3)
この点からも、ウラン試験をまず中止させてください。
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