関電のMOX燃料品質保証報告書:新たな目玉「ロイド社の助言」は子供だまし—「品質方針は社長のハンコで強調せよ」—

本日関電は、報告書「海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善状況について」を、経済産業省、福井県、高浜町および京都府に提出した。その後の記者会見で、それら提出先で報告内容の確認を受けた後、「皆様のご理解のもと」、今年度内にMOX燃料の加工契約締結を目指すとしている。

この品質保証活動の改善は、1999年のBNFL社によるMOX燃料データ不正事件を踏まえたものだと関電は述べている。また、この間には他にもコジェマ社で製造したMOX燃料を60億円もの賠償金を払って廃棄にしたという問題もあった。しかし、これらの問題の本質的な点については、以下に述べるように何も明らかにされていない。改善をうたうこの報告書はただの作文に過ぎない。

関電の今回の報告書は、自社の「品質保証体制」について述べただけものである。これを基に、いったい海外のどのMOX製造会社と契約を結ぼうとするのであろうか。BNFL社は、ドイツやスイスとの契約分をライバルのコジェマ社等に製造依頼したことが最近明らかになるなど、不正事件を起こしたMDF施設にかわる新たな製造施設SMPには、MOX製造能力のないことが明らかになっている。また、コジェマ社は、アメリカとのMOX燃料製造契約をフランス政府の製造許可なしに結んだという問題が新たに浮上している。関電が契約を結ぶことのできるまともな製造会社などないのである。

危険なプルトニウム入り燃料を、ウラン燃料用に設計された原発でわざわざ使う必要などまったくない。MOX燃料は、福島県でも新潟県でも拒否されている。関電は3度目の失敗を招く前に、プルサーマル計画そのものを断念すべきである。

関電の報告書についての問題点は以下のとおりである。

1.なぜ高浜4号用MOXに不正なしと決めつけたのか−組織的原因究明なし

1999年のBNFLデータ不正事件では、高浜3号用MOX燃料で不正のあることが明らかになったとき、関電は高浜4号用には不正はないと直ちに決めつけた。その後、不正情報を入手しながらそれを隠蔽した。このような事実およびそのようなことがなぜ行われたのかという組織的原因については、まったく触れられていない。

2.「プルサーマルをスタートでつまずかせ」たことへの反省はあるが、住民を危険にさらそうとしたことへの反省なし

この報告書では、「品質・安全委員会」を設置したとか、「原子力安全を最優先として」など、「安全」がうたわれている。ところが、BNFL事件で起こったデータ不正は何ら安全を損なうものではなかったというのがこれまでの公式見解である。この点に対する反省が何もない。「プルサーマル計画をスタートでつまずかせ」たこと、規制当局に情報を伝えなかったことは反省しているが、不正MOXを装荷して住民や国民を危険にさらそうとしてことに対する謝罪やその責任はいっさい明らかにしていない。

3.データ不正の陰にMOX製造・検査の困難があることを隠している

MOX燃料はプルトニウムを含んでいるがゆえに、ウラン燃料にはない製造・検査の困難があることはよく知られた事実である。その困難がMOX燃料データ不正の基盤をなしたのであるが、その事実が報告書では何も触れられていない。

4.「社員を常駐させる」必要は認めたが、コジェマでMOXを廃棄した責任は隠蔽

この報告書で関電は、「規制当局から新たな要求事項として『製造期間を通じてMOX燃料加工工場に社員を派遣し、製造開始後のMOX燃料加工事業者の製造状況及び品質保証活動について確認すること。』が示されたため、対応する必要があった」と述べている(報告書6頁と8頁)。この「対応する必要」は、BNFL事件の際ではなく、その後のコジェマ社での製造に関する内容であることは明らかである。事実、関電は2001年12月に、コジェマ社で製造したMOX燃料を60億円もの賠償金を支払ってまで廃棄措置にしている。ところが、報告書では、そのような具体的な事実を何も明らかにせず、こっそりと抽象的に記述しているだけである。人々の支払った電気料金から莫大な損害を起こしておきながら、その点について何も触れていない。

5.鳴り物入りのロイド社の助言はただの子供だまし

関電は第三者機関であるロイド社の助言を受けたことを新たな活動の証であるかのようにもち上げている。ところが、このロイド社の助言たるものを見ると、例えば「品質方針はトップのコミットメントとして重要なのでサインをして強調したほうがよい」などというように、まるで子供だましのものに過ぎない。

6.情報公開の姿勢なし

関電は最後に、「常に社会の声に耳を傾けながら」などと述べているが、この「社会」とは何を指しているのか明らかでない。第2項で述べたように、関電には住民や国民の安全はまるで眼中にない。社会の声に耳を傾けるためには、その前にあらゆる情報を公開しなければならない。しかし、すべての情報を公開するという姿勢はどこにも一言も書かれていない。

2003年10月23日

以上

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