ブリティッシュ・エナジー社、原発財政で悲鳴──原子力発電・再処理コスト、イギリス最大の電力会社の首絞める

ブリティッシュ・エナジー公開有限会社(以下BE社)は、イギリスの総電力の5分の1を発電するイギリス最大の電力会社である。イギリス国内に15基、総発電能力約960万kWの原子炉を所有し、運転している。同社はまた、米国とカナダでも原発の運転を行っている。

BE社は、2002年8月12日、イースト・ロジアン[訳注:スコットランド東部、ロジアン県の東部]にあるトーネス原発1号炉[訳注:AGR=改良型ガス冷却炉、1364MW]で、原子炉を冷却するガス循環系で振動が発生したため、閉鎖を余儀なくされた。同原発の2号炉も、同様のトラブルで5月から停止している。これら2基の発電量は、BE社の年間総発電量の12%を占めており、同社によると、これらの停止の他の予定外の停止が重なれば年間発電量が4.5テラWh[訳注:兆ワット時]の減少となり、メンテナンス費2500万ポンドの損失になるという。トーネス原発停止の報道後、停止が長引けば利潤と配当が減ることになるとのアナリスト発言があり、BE社の株式は30%下げた。

BE社は、1996年の民営化のさいに、イギリス政府から15基におよぶ原子炉を、同社の最新原子炉であるサイズウェル原発B号炉の建設費のちょうど半分の価格で譲り受けた。最近の株価下落により、同社の市場価値は3億7000万ポンドしかなくなったのに対して、サイズウェル原発B号炉の建設費は約20億ポンドにのぼった。

民営化以降、BE社は原発の発電量を10%増やし、発電コストを30%削減した。ところが、同社は自由市場環境での競争に依然として苦戦している。電力市場自由化の直接の結果として、近年英国では電力の卸価格が30%下落した。現在、電力価格は千kWh 当たり12ポンドを割り込んでいるが、これはBE社が利潤を上げるために必要な価格を7ポンド下回っている。ロビン・ジェフリー社長は、今年電力価格がさらに10%下がれば、BE社は1億4000万ポンドの収入を失うことを最近認めている。

原発の発電価格が高いことに加えて、使用済燃料の管理コストも民営化後のBE社の財政逼迫を深刻化させている。2001年11月、BE社取締役会は、同社が結んだBNFL社との再処理契約を利潤率と競争力を壊滅させるものと批判した。BE社取締役会は、使用済核燃料の再処理コストは使用済核燃料の貯蔵コストの6倍にのぼっていると指摘した。使用済燃料を直接貯蔵することで、年間2億5000万ポンドが節約できるとBE社では見ている。

BE社は、2001年11月、放射性廃棄物政策について広範囲な再検討作業を行っている英国下院の環境、食糧、田園地域業務委員会(DEFRA)に提出した申入書のなかで、「再処理は不必要かつ高価な業務であり、同社には再処理を行うような余裕はない」とし、セラフィールドにあるBNFL社のTHORP再処理工場におけるこれ以上の再処理を即刻モラトリアムに付すよう要請した。

2001年11月7日に年上半期の業績報告を行ったさい、BE社の広報担当は「再処理は巨額のコストが掛かるため、われわれは再処理がいいとは全く考えていない。この契約は交渉をやり直したいと考えている。電力コストが大幅に下落しているときに、われわれは使用済核燃料の処理にアメリカの発電業者の6倍もの資金を支払っている」と語った。BE社のマイケル・キーマン財務部長は「われわれに関する限り、再処理は経済的にナンセンスであり、ただちにやめるべきだ」と明言している。

日本の電力会社への教訓

日本の電力市場は現在、規制緩和の途上にあり、最近経済産業省が発表したガイドラインでは、2005年に市場の全面開放を行うことが謳われている。日本の電力会社は、すでに規制緩和市場環境のなかで競争力を維持するためのコスト削減を始めている。BE社の現在の財務状況から日本の電力会社が学べることは数多い。たとえば、日本の電力会社は現在、使用済核燃料1万トンを現在青森県の六ヶ所村で建設中の再処理工場で再処理する契約を日本原燃と結んでいる。日本の新聞報道によると、六ヶ所再処理工場の使用済核燃料1トン当たりの再処理価格は、イギリスBNFL社のTHORP再処理工場の4倍にのぼると見られている。日本の電力会社は、BE社の警鐘に耳を傾け、日本原燃との再処理契約を解除すべきである。

和訳:真下俊樹

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