国内再処理の経済的評価

日本の電力会社10社は日本原燃と再処理役務契約をすでに締結しており、15年間で1万トンの使用済み核燃料を再処理する予定である。ところが電力の自由化拡大が確実となった今、これまで国の再処理政策を全面的に支持してきた電力会社の内部から、経済性を理由に核燃料サイクル計画の見直しを求める声が盛んになってきた。このような状況から電力会社は2001年秋、再処理の経済性を調査するため電事連の「核燃料サイクル事業推進本部」を中心に、再処理コストの試算値をまとめる作業に入った。今年の秋をメドに検討結果を発表すると見られている。

日本の電力会社は検討作業が終了した時点で、再処理の不経済性を理由に政府に対し、再処理政策の見直しを提案すべきである。

以下に国内再処理の不経済性に関する根拠を示す。

■リスクが分散されていた海外再処理

日本の電力会社はこれまでに7200トン以上の使用済み核燃料を海外の再処理業者に委託してきた。

1970年代から英BNFL社と仏コジェマ社には大規模な商業再処理施設を建てる計画があった。しかし、これらの施設を建設・運営するためには膨大な資金を必要とし、両社は建設資金などを確保するため、外国の電力会社と再処理役務契約や融資契約を締結した(コジェマ社は5ヶ国23社、BNFL社は8ヶ国28社)。日本の電力会社は1977年にコジェマ社、1978年にBNFL社と再処理契約を結んだ。

当時はいずれの再処理工場も未着工であったため、建設費をはじめ、操業コストはすべて未定だった。にもかかわらず締結された契約は「コストプラス方式」契約と呼ばれ、再処理役務を履行するためのすべての費用と一定の報酬が再処理業者に保証される内容になっていた。つまり、どれだけ再処理のコストが高くなっても英仏の再処理事業者が経費を確実に回収し、損をしない仕組みになっていた。

実際1980年代に入ると、それぞれの再処理施設の建設費が増加し、BNFL社とコジェマ社は次々と追加コストを海外顧客に請求していった。使用済み核燃料の行き場がなかった電力会社は無条件にこれらの追加コストを引き受けざるをえなかった。

再処理実績に関してもコジェマ社は予定通り、10年間で7000トンの再処理を完了させたが、BNFL社の再処理はうまくいかず、当社が英国の規制当局に提出した最近の再処理計画によると、7000トンを完了するのに12年間か13年間かかる見通しとなっている。年間の運転費用が約150億円かかるので、これらの遅れは最終的な再処理コストを高騰させている。

このように海外再処理も試行錯誤の中、コスト高騰は見られはするが、日本の電力会社10社の他に多数の顧客が存在するため、コスト増加のリスクがそれなりに分散されていた。

さらに日本の電力会社は他国の電力会社に比べ実質的な経済的損失が少なかった。日本では自由化はまだ部分的にしか行われておらず、電気料金の価格設定がいぜん高く設定されている。もうひとつは為替変動による円高である。再処理契約が締結された1978年ごろの為替レートは1ドル250円前後だったので、その後の円高傾向を考えるとコストの増加は為替レートの変動により帳消しにされてきた。

■海外の数倍にのぼり、全コストを電力会社で負担しなくてはならない国内再処理

六ヶ所再処理工場では、これまでの海外再処理と違って、再処理にともなうすべてのコストを日本の電力会社が負担しなければならない。したがって使用済み核燃料1トン当たりの再処理費用が高くなればなるほど電力会社の経営状況は圧迫されるであろう。

国内再処理のコスト試算について考えてみる。

日本原燃の発表によると六ヶ所再処理工場の建設費は2兆1400億円と推定されている。しかし、電力会社の関係者によると3兆円から5兆円かかるのではないかという見方もある。電力会社は2004年度までに使用済み核燃料1トン当たり1億円の再処理前払い金を日本原燃に支払う約束をしているが、最終的な費用は確実にこの数倍にのぼる。

経済産業省が1999年に六ヶ所再処理工場における再処理のコスト試算を行った結果、1トン当たり、3億5100万円かかるとしている。ところが、2002年2月8日の「東奥日報」の1面記事では、日本原燃が電力会社に提示したコスト試算では使用済み核燃料1トン当たりの再処理費用が3億9000万円になる見込みと報じている。この計算では再処理工場の建設コストが現在の予算の2兆1400億円のままに据え置かれているし、施設の修繕費(一般には年間、建設費の5%と言われる)や人件費などは年間800億から1000億円ととても低く積算されている。

なお、この計算で日本原燃は一次契約分の1万トンを15年間で再処理を完了すると見込んでいるが、この設定もあまり現実的でない。BNFL社のように事故や故障などで年間の再処理目標が達成できなくなると、さらなる運転コストが必要になってくる。

以上が国内再処理の不経済性に関する根拠である。自由化拡大を目前に電力会社はその経営手腕を問われており、このようなコスト度外視の事業には直ちにメスを入れなければならない。

以上

連絡先

「再処理とめよう全国ネットワーク」
ニュースNo. 2
から抜粋
スティーブン・レディ
グリーン・アクション