2016年1月28日 [日本語訳]:アレバ・ジャパン社宛書簡:MOX燃料品質保証データの情報公開について

[日本語訳]

Dear Frédéric Patalagoity,
アレバ・ジャパン 代表
President and Managing Director of AREVA Japan.
Yubinbango 105-0001 Toranomon, Minato-ku,
Tokyo 1-chome, 16-4

January 28th 2016
2016年1月28日

Dear Frédéric Patalagoity,

日本の電力会社のために製造されたアレバ社のプルトニウムMOX燃料、特に、関西電力高浜原発3,4号機の30体ものMOX集合体に関して、生産規格・品質管理と安全性についての我々の憂慮を表明するために書簡を差し上げます。

ご存知のように、15年前、プルトニウムMOX燃料の規格管理・品質管理のレベルの低さについて最初に露呈したのは英国セラフィールドのBNFL社により製造された福井県にある関西電力高浜4号機用8体のMOX燃料についてでありました。当時公開されたBNFL社の品質管理データに基づく分析を根拠としてグリーンアクションと美浜の会が訴訟を起こしました。最初の2か月もの間、関西電力とBNFL社は品質管理データの捏造を否定をしました。しかし、司法判断が下される1日前に、関西電力とBNFL社は高浜4号機用のプルトニウムMOX燃料の品質管理データに捏造されたものが含まれることを認めました。その燃料は英国に返還され、処分されました。

1999年と2000年、我々はMIMAS法によりコジェマ/アレバ社のメロックス工場などで製造されたMOX燃料の製造・品質管理水準について分析を行いました。その結果、その品質管理はBNFL社以下であったことがわかりました。本件は、福島第一原発3号機用の32体のMOX燃料の装荷差し止めの裁判で争点となりました。それは東京電力とコジェマ社の子会社であるコモックス社間の契約のものと、MIMAS法により製造されたものです。福島地方裁判所は差し止めこそしなかったものの、MOX燃料の品質管理データは公開されるべきとしました。しかしその後もコモックス社によりそのデータが公開されることはありませんでした。そうした安全性と品質管理をめぐる疑惑と論争もあり、東京電力は2011年3月の原発事故の6か月前である2010年9月まで32体のMOX燃料を使うことができなかったのは周知の通りです。

2001年には28体のMOX燃料集合体が新潟県柏崎刈羽原発に輸送されましたが、品質管理問題、MOX燃料の安全性をめぐる議論があり、刈羽村の人々の反対で、柏崎刈羽原発3号機に装荷されることはついぞありませんでした。15年経ちましたが、いまだにその燃料は原発敷地内の燃料プールに未使用のまま保管されています。

アレバ社がMOXビジネスを日本の電力会社を相手に再開しようとしている今も、製造・品質管理問題は解決していません。552キロものプルトニウムを含む12体のアレバ社製MOX燃料集合体が2010年に高浜原発に搬送されました。そのうち8体は3号機に装荷されています。アレバ社とNFL社(MOX燃料のデザインコード開発および認証に携わっており、関西電力および他の日本の電力会社の契約上の代理人)の間で、アレバ社の仏マルクールのメロックス工場のMOX燃料の規格・品質管理上の不合意があったことを存じ上げています。アレバ社の製造に関わる問題および非協力的な態度の結果、NFL社は程度の低い規格・品質管理に合意しています。それは関西電力のMOX燃料にも及んでいます。アレバ社はこのたび、品質管理データの公開に答えていません。

MOX燃料の使用では安全性が損なわれるとより厳しい結果となります。メロックス工場の規格・品質管理では、よりよくない結果となりえます。

メロックスで採用されているMIMAS法の技術には、MOX燃料の熱安定性に関し、深刻な問題点があります。もしプルトニウムペレットが熱で膨張し、ガス状の核分裂生成物によって内圧が生じれば、ガスで満たされたペレットと被覆管のギャップが開きます。冷却材消失事故の際、MOX燃料はもともと扱いにくいが、さらに脆くなりやすくなり、燃料の”移動“もおこりやすくなります。不均質な燃料構成は燃料棒破損の可能性を増し、過渡変化が起こると、ブロックの冷却チャンネルが炉心の冷却機能に衝撃を与えることがあり得る。よって、生産規格や品質管理について高い水準が保たれねばならないことは大変重要です。しかし、メロックス工場においてはこの限りではないようです。

メロックスのMOX燃料の熱安定性の問題はアレバ社により日本の原子炉に燃料が供給される計画の多くの問題の一つにすぎません。高浜原発にMOX燃料が搬送されてから5年たちますが、アレバ社は生産規格・品質管理の詳細について公開する努力を怠っており、それは日本の人々にとって容認できることではありません。東京電力福島原発事故の被害にあった日本の人々は、今、高浜原発3,4号機の再稼働というリスクにさらされています。そこにはそれぞれ24体、4体つまり1,088キロ、184キロのプルトニウムを含むアレバ社製MOX燃料が装荷されます。

日本の原子力規制委員会がMOX燃料のリスクの再評価を行ってないことを深く憂慮します。それは信頼のおけない原子力安全・保安院による評価に依存することを意味するからです。同時に、このレベルの低い製品の生産者であるアレバ社は、まさにこれから高浜原発で使われようとしているMOX燃料の生産規格・品質管理のデータの公開の義務を負っています。フランスの原子力安全規制機関であるASNは、グリーンピース・フランスに対し、日本に輸送された燃料に関し“ASNは日本の電力会社向けの製品の品質管理には関わっていない”と述べています。

我々はアレバ社が将来のビジネスに対し、危機感を抱いていることを理解しています。日本の電力会社とのMOX燃料契約、2016年に予定されている輸送を確実にすることは優先度が高いはずです。しかしビジネス上の利益を安全性より優先することはアレバ社自身を含み、誰の利益にもなりません。

福井の、関西そして日本の人々に対し、核実験を行うことは許されるべきことではありません。今年は、東京電力福島原発事故から5年目でありますし、アレバ社がメロックス工場のMOX燃料の品質管理データの公開を拒んでいる事実は理解しがたいことです。我々は、高浜原発での使用が間近に迫った30体のMOX燃料集合体の品質管理データの即時公開を求めます。

敬意を込めて

Shaun Burnie
Senior Nuclear Specialist,
Greenpeace Germany,
Tokyo

Aileen Mioko Smith
Executive Director,
Green Action
Kyoto

Hideyuki Ban
Co-Director,
Citizens’ Nuclear Information Center
Tokyo

Hideyuki Koyama
Director,
Osaka Citizens Against the Mihama, Ohi and Takahama Nuclear Power Plants (Mihama-no-Kai)
Osaka


PDF: アレバ・ジャパン社宛書簡 2016年1月28日
English version: Letter to AREVA, 2016-01-28