福井県原子力安全専門委員への要望書

「もんじゅ」の耐震安全性評価に関する要望書

福井県原子力安全専門委員会 各位様

2010年3月21日

 原子力安全委員会は、3月18日に「もんじゅ」の耐震安全性評価を妥当とする報告をまとめました。原子力安全・保安院から報告を受けてわずか5日間で結論を下したことに、驚きの念を隠せません。
 貴委員会では、次回の会合で「もんじゅ」耐震安全性の問題について審議されます。阪神淡路大震災や2007年の中越沖地震による柏崎刈羽原発の全号機停止という経験を踏まえると、また1月9日に「もんじゅ」近郊で起きた地震などを考えると、「活断層の巣」とも呼ばれる若狭地域で「原発震災」が現実のものになるのではないかと、県民や周辺住民の不安は尽きません。ご承知の通り、「もんじゅ」は普通の原発と比べて、薄い配管が大蛇のようにくねっており元々地震に弱い構造となっています。そのため、多くの人々が「もんじゅ」の耐震安全性の問題を注視し憂慮しています。県知事も、耐震安全性の確保をとりわけ重視されています。
 「もんじゅ」の耐震安全性評価には、下記のように大きな問題があります。貴委員会でこれらの問題点を慎重に検討されることを強く要望します。

1.活断層の評価について
(1)「もんじゅ」直下の活断層に関して
 以前に国は、「活断層の上には原発は作らない」と説明してきました。しかし、「もんじゅ」の直下には、白木・丹生断層とC断層の2本の活断層が走っていることが明らかになりました。このことは、以前の国の説明に照らせば、「もんじゅ」の立地・運転そのものが許されないという問題を含んでいます。
 さらに、中越沖地震は柏崎刈羽原発に大きな影響を与えました。「もんじゅ」直下のいずれかの活断層が動けばマグニチュード6.9の地震が起き、地震のエネルギーは中越沖地震の約1.4倍にもなります。
 「活断層の上に原発は作らない」という国の見解が変わったのか、及び「もんじゅ」直下の活断層の影響について、広く県民に説明するよう、国に要請してください。

(2)山中断層に関して
 「もんじゅ」周辺には「活断層の巣」とも呼ばれるほど、多くの活断層が存在します。原子力機構は、活断層評価において、多くの活断層の中で山中断層を「文献断層」として評価対象から外してしまっています。原子力機構は、山中断層の「現地調査」と称して「大規模な剥ぎ取り調査」を実施したとしていますが、それは山間の道路に沿った60メートル幅の露出部を数メートルの深さで観察したものでしかなく、断層が存在しないことの根拠にはとうていなりません。国の地震調査研究推進本部は、山中断層の存在を認めています。山中断層を認めれば、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の連動性をも考慮することになり、その場合、 100�以上の活断層の連動によってM8.2規模の地震を想定する必要があります。そうなれば、現在の基準地震動760ガルは過小評価となるので、地震動評価はやり直すべきです。

2.配管の耐震性評価 1次系配管で4%の減衰定数を使用している問題
 原子力機構は、配管の減衰定数を0.5〜3%として評価を行っています。しかし、2月13日の第58回資料No.1−3の8頁の記載にあるように、一次ナトリウムオーバーフロー系配管の1ラインだけは、配管にかかる応力が小さくなる減衰率4%を使って基準値以下に収まったと評価しています。保安院は、「実機の測定結果に基づき、保守的な値として4%を使用している」としてこれを認めてしまっています。
 しかし、安全側にとるのであれば、少なくとも3%を使用するべきではないでしょうか。それで基準値を超えるのなら、補修等が必要となるはずです。

3.発生応力値が低くなる「詳細解析」の手法について
 配管や機器の耐震評価について、原子力機構は、「応答倍率法」による評価で発生応力値が基準値を超えれば、「詳細解析」を繰り返し、基準値以内に収まったという手法をとっています。この問題については、2月13日の第58回貴委員会でも議論になり、委員からは、「色々曖昧なファクターが重なって出てきた結果なので、許容値以下だからOKとするのは、都合の良い論理だと思う」「モードの確からしさをどうやって確かめているのか」等の意見が出されました。そして3月18日の第59回貴委員会で、原子力機構は「これまでの意見に対する回答(耐震安全性評価について)」(資料No.2−1)をもとに説明しました。しかし、その内容は、「設計基準値そのものに安全余裕がある」等々の一般論のみで、「詳細解析」の「モードの確からしさ」についての具体的説明はありませんでした。少なくとも、下記の(1)(2)を代表例として、「詳細解析」の具体的な妥当性について説明を求めて下さい。

(1)蒸気発生器(蒸発器)スカート部の評価
 この部位の基準値は431MPaであり600ガルの時でさえ余裕は1%(427/431)でした。それを「評価方法を詳細化」したことによって、基準地震動が大きくなっても発生応力値は1/3以下に小さくなってしまっています。あまりにも不自然ではないでしょうか。

(2)格納容器下部の挫屈評価
 同じような手法が格納容器下部の挫屈評価でも行われています。国の原子力安全基盤機構(JNES)が独自に行った評価でも、国が基準としているJEAG 挫屈評価式を使えば、評価値と基準値はほぼ同じとなっており、このままでは基準値を満たすことはできません[別紙資料参照]。しかしここでも、「詳細解析を実施し十分な裕度がある。(「発生荷重/挫屈荷重は0.5程度」)」としてしまっています。格納容器という「最後の壁」は、本当に現在の評価で大丈夫なのでしょうか。

2010年3月21日

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