日本原燃宛:六ヶ所再処理工場での耐震設計ミスとその隠ぺい等に関する質問書
2007年6月4日
日本原燃�社長 兒島伊佐美 様
5月11日、耐震設計ミス問題について貴社は、「再処理工場(使用済燃料受入れ・貯蔵建屋)における燃料取扱装置及び第1チャンネルボックス切断装置に関する耐震計算の誤入力について(報告)【公開版】」(以下、「今回報告書」)を公表しました。この報告書によれば、表題のとおり、2つの機器、計5台に耐震設計上のミスがあり、耐震性が不足していました。
しかも、そのミスはすでに1996(H8)年に日立で気づかれながら、11年間も隠ぺいされ続けてきました。耐震性能がない機器を使用して昨年3月末からアクティブ試験を行ってきた貴社の責任は重大です。
貴社は、これまでにも問題が発生するたびに「総点検」を繰り返してきました。とりわけ、2005(H17)年1月28日付の「特定廃棄物管理施設のガラス固化体貯蔵建屋B棟及び再処理工場においてガラス固化体を貯蔵する類似の冷却構造を有する設備における崩壊熱の除去解析の再評価結果報告書」(以下、「05年報告書」)と2006 (H18)年1月26日付の「再処理事業所設計等に関する点検結果について」(以下、「06年報告書」)において、すべての誤りを克服したはずでした。
とくに、「06年報告書」に記載されている総点検は、アクティブ試験に入るための前提としての点検であったはずです。ところが今回、この総点検に欠陥があったことが明らかになりました。従って、試験に入る前提が崩れた以上、アクティブ試験は直ちに中止するべきだという結論になります。
このような考えに立って、以下の質問を行います。
また、アクティブ試験第3ステップでせん断したBWR燃料集合体の体数とウラン重量の関係についても質問を付加します。
回答は速やかに文書で示し、それについて説明する場を設けてください。
質問事項
A 耐震設計ミスに関して
1.今回の設計ミスの発見と「耐震設計審査指針の改訂に伴う」評価作業の関係について
「今回報告書」1頁では、今回の設計ミスが判明した経緯について次のように触れています。
- 日立は、「『発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針』等の改定に伴う既設設備の耐震安全性評価に関する作業にあたり」、今回の「耐震計算が誤っていることを確認した」こと。
- その耐震安全性評価作業は、貴社が日立に発注し、日立は協力会社�に発注したこと。
しかし、「今回報告書」には設計ミスが明るみにでた経緯が書かれていません。また本文には経過についての日付がいっさい書かれていません。
そこで、この経緯に関連して以下の質問をします。
- 貴社は、すでに2006(H18)年10月18日に「既設再処理施設の耐震安全性評価実施計画書」を公表しています。この計画書に基づく評価作業を最初に日立に発注したのは何月何日ですか。
- 「今回報告書」添付資料2─1で4月に日立に発注したと書かれている「評価作業」の業務内容は何ですか。その発注は今年の4月何日に行ったのですか。また、日立が協力会社�に発注したのは4月何日ですか。協力会社�が協力会社�に発注したのは何月何日ですか。
- 日立の協力会社�とは「日立エンジニアリング・アンド・サービス」のことですか。また、協力会社�とは「茨城日立情報サービス」のことですか。違っていれば正しい社名を明らかにしてください。
- これまで11年間にわたって隠ぺいされてきた設計ミスが、なぜ今回、どのような経緯で明るみにでたのですか。設計者Bが自ら吐露したのですか、それとも何らかの内部告発によるものですか。また、明るみに出た日時は何月何日ですか。
- 協力会社�から設計ミスの事実が日立に報告されたのは何月何日ですか。
- 2007(H19)年5月21日に日立が原子力安全・保安院に提出した報告書(概要) には、「日本原燃が当社の事実関係を直接確認したものであり、・・」と書かれています。貴社が「直接確認した」ものは何ですか。貴社は協力会社�の担当者Aや設計者Bから直接事情聴取したのですか。
2.「05年報告書」と「06年報告書」が示す水平展開でなぜ今回の設計ミスが発見できなかったのか
貴社は、「05年報告書」と「06年報告書」で示すように、「設工認で使用した計算式及び解析コードの確認」を水平展開しています。「計算式及び解析コード」が「適切に適用されていること」を確認した「05年報告書」では、次のように貴社の「社員」が確認したことを強調しています。
「特定廃棄物管理施設及び再処理施設を対象に、設工認の安全設計に使用した計算式について、同様の誤りがないかを確認することとした。加えて、設工認の安全設計に使用した解析コードについても、併せて確認することとした。これらの確認は、臨界、しゃへい、火災・爆発の防止、耐震、耐圧強度等の各分野に精通した専門知識を有する社員により実施した。」(P6)
これは、「(建設実績があったため)元請会社の設計を信頼していたことから、設計レビューがなされなかった」と元請会社任せであった点を「反省」しての措置です。
ところが、貴社「社員」による確認の姿勢は、「入力データの妥当性確認」をした「06年報告書」には見当たりません。
他方、「今回報告書」10頁では、今回の設計ミスを「平成17〜18年」に発見できなかった根本的な原因について次のように述べています。
「設工認申請当時(平成5年)、協力会社�において解析コードの入力形式が変更になったことを認識していない担当者Aが設工認に係る業務を行っていた。平成17年当時の『入力データの妥当性確認』におけるグループ分けの際に解析コードの変更が適切に管理されていないケースがあることを認識しておらず、解析コードの変更に関する考慮が結果として十分ではなかった。」
これは文脈から明らかに、日立の欠陥を指摘したものです。
その上で、貴社が発見できなかった理由として次のように述べています。
「日立から当社へ提出された出力データシートは設工認申請当時のものであったが、一方で入力データシートは、平成8年に設計者Bが試計算に使用した正しい入力データであり、両者が整合していなかったことから、誤入力を発見できなかった。」
これらの点について以下の質問をします。
- 前述のような「05年報告書」で反省した姿勢からすれば、今回「解析コードの変更に関する考慮が結果として十分ではなかった」ことに関する責任は、日立より前に第1に貴社にあるのではないのですか。
- 「今回報告書」の添付資料2─2の注釈※2には、「通常解析コードの出力シートには、当該解析に使用したデータ(入力データ)も印字される」と書かれています。そうすると、耐震に精通した専門知識を有する貴社の社員は、出力データシートだけから、ミスを発見することができたはずですが、なぜできなかったのですか。
- その上、その出力データシートにある入力データを、設計者Bが試計算に使用した正しい「入力シート」と比較すれば、より一層明確にミスを発見することができたはずなのに、なぜそれができなかったのですか。
- 2005(H17)〜2006(H18)年の点検では、「設工認で使用した計算式・解析コード」を使用するはずだったのに、なぜ設工認で使用していない試計算用の「入力データシート」を用いたのですか。
- 2005(H17)年11月に「日立から当社に対して当該設備は再確認不要の回答」(「今回報告書」添付資料2─1)があったとされていますが、この「回答」に対する貴社の検討内容を説明してください。
3.燃料取扱装置が点検対象の「代表機器」とならなかった理由について
「今回報告書」9ページで、燃料取扱装置の解析コードについて誤りを発見できなかったのは、「確認ルールに基づき同グループの他の機器を代表として確認したため」としています。
貴社がこれまでに行ってきた数々の「総点検」は、「確認ルール」を作成して、まずグループに分け、その中から「代表機器」を選んで「確認」する方法でしたが、今回の「設計ミス」は、「代表機器」選定による確認では不十分であることを示しています。
- 燃料取扱装置のフレーム部の解析コードは、「確認ルール」によって代表機器として選ばれず、同一グループの代表機器は「高レベル濃縮廃液濃縮缶」であり、それを確認したため、入力データの誤りを見つけられなかったとしていますが、燃料取扱装置フレーム部と高レベル濃縮廃液濃縮缶がなぜ同一グループになるのですか。「確認ルール」を説明してください。
4.チャンネルボック切断装置の「出力データ」の確認について
第23回「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」に日立が提出した資料(参考資料4)�─8頁に次の記載があります。
「日本原燃殿からアクティブ試験前における設計再確認として、・・・解析コードへの入力データが印刷された出力シートの提示要求があった。(中略)この時、設計者Bは、平成8年に設計者Bが実施した再計算で使用した床応答スペクトルの訂正した計算機への入力値を送付してしまった。このため、当社の担当設計部署は、入力値の誤りに気付くことなく、その出力シートを原燃殿に提出した。」
- 貴社は、「入力データが印刷された出力シート」の提示を要求したのですが、そのとおりのものが日立から提出されたのですか。「入力データ」が印刷されていたとすれば、それは設工認の時の「入力データ」だったのですか、それとも平成8年に設計者Bが作成した「入力データ」だったのですか。貴社は、この「入力データが記載された出力シート」を点検したのですか。この時点でなぜ「設計ミス」が発見できなかったのですか。
5.「検討会」に日立が提出した資料(参考資料4)と貴社の「今回報告書」添付資料2─1との食い違いについて
- 添付資料2─1の「時系列」では、「平成17〜18年 計算式及び解析コードで用いられた入力データの妥当性確認時」の対応は2005(H17)年11月までしか書かれていません。他方、日立の参考資料�─8頁では「平成17年(2005年)1月から平成18年(2006年)2月にかけて、日本原燃殿からの指示に基づき、解析評価の妥当性確認及び設計再確認を実施した」となっています。
なぜ、添付資料2─1の「時系列」に、2006(H18)年2月までの対応が記載されていないのですか。
6.1996(H8)年時の総点検について
貴社の「検討会」資料23─4の「5.事実関係」の最初(10頁)によると、1996(H8)年の設工認総点検は、「他の設工認における誤記を踏まえた設工認申請書の耐震計算書について総点検実施」となっています。
- 「他の設工認における誤記」とはどのようなものですか。また、それはどこで公表されているのですか。
- このとき実施した耐震計算書についての総点検の結果はどこで報告・公表されていますか。
7.日立から設計ミスが報告された後もアクティブ試験を継続したことについて
貴社は今年4月17日に日立から設計ミスについての報告を受けた後、4月18日に2種類の当該装置の使用を停止したものの、アクティブ試験については4月26日まで継続しました。
- 設計ミスは当該2種類の装置だけでなく、他の装置等にも存在した可能性があったにもかかわらずなぜ直ちに試験を中止しなかったのですか。住民の安全性を最優先するという姿勢に欠けるのではありませんか。
8.アクティブ試験に入る前提として実施した総点検に欠陥があった以上、アクティブ試験をただちに中止すべきではありませんか
「06年報告書」の「はじめに」で貴社は「品質保証体制点検で整えられた体制によって、アクティブ試験の開始までに、原点に立ち返って点検を行うこと」という指示に基づいて2005(H17)年の総点検を行ったことを述べています。また、その指示について保安院の古西課長は、「我々、原子力安全・保安院といたしましてはこの機会、このタイミングをもちまして・・・膿を出しきる気持ちをもって念には念を入れて点検をしてほしい」との考えを表明しています(第17回六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会 2005(H17)年12月19日)。
ところが、今回明らかになったのは、このときの点検に欠陥があり、設計ミスを発見することができなかったということです。それにも係わらず貴社はアクティブ試験を再開し、予定どおり本格運転に入るなどと表明しています。
- アクティブ試験に入るための前提として実施された総点検に、欠陥があったことが明らかになった以上、アクティブ試験をいったん中止すべきではありませんか。
B 第3ステップでせん断したBWR燃料集合体の体数とウラン重量の関係について
第3ステップでせん断するBWR燃料の予定については、貴社はウラン重量を約50トンと公表していますが、体数については公表していませんでした。
他方、せん断した実績については、2月に130体・約23トンU、3月に145体・約27トンUと公表し、合計では275体で予定どおり約50トンUとなります。
この点について以下に質問します。
- 種々のデータから判断すると、3月にせん断した145体のウラン重量約27トンは明らかに大きすぎます。この145体について、1体当たりのウラン重量はいくらか有効数字3桁で答えてください。また、145体はどの電力会社の使用済み燃料ですか。
- 合計体数275体のウラン重量がいくらか、有効数字3桁で正確に答えてください。
2007年6月4日
花とハーブの里
〒039-3215 青森県上北郡六ヶ所村倉内笹崎1521 菊川方
三陸の海を放射能から守る岩手の会
グリーン・アクション
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会