関西電力宛:美浜1・2号で技術基準を用いずに評価し、「念のため」配管を取り替えたこと等に関する質問書
関西電力株式会社社長 藤 洋作 様
1.ミルシートの実績値を用いて評価を行い、問題なしとしながら「念のために」配管を取り替えた問題について
貴社は、美浜1号・2号で技術基準に定められていないミルシートの実績値を用いて余寿命を評価し、問題はないとの見解を示していました。昨年10月8日開催の第9回福井県原子力安全専門委員会に貴社が出した文書には、「許容応力評価について当該材料の実績値を用い、次回定期検査までの間は問題ないものと評価しましたが、・・・当該部位について念のため取替え補修を実施し・・」と記載されています。
この問題について、前回(1月20日)の交渉では、「『念のため』と書いた意図を確認するとのことでした。
- (1)
- 「念のため」と書いた意図は何だったのですか。
- (2)
- 「念のため」とは、配管の健全性は「当該材料の実績値」で確認しているので問題はない。問題がない部位を取替えるので「念のため」と記載したもの、と理解していいですか。
- (3)
- 第9回福井県原子力安全専門委員会で原子力安全・保安院の梶田原子力発電検査課長は、「資料2において、・・・、念のため取替えると記載しているが、これは関西電力の技術基準に対する認識が不十分であると言わざるを得ない」と指摘しています。これに対し、岸田副社長は、「・・・梶田課長の指摘どおりであり、ただし書き等を含めて、現在の技術基準どおり実施していくと決めており、社内に周知徹底している」、「『念のため』と記載していることについては、誠に申し訳ないと思っている。(今後、資料を訂正する。)」と謝罪したことが第9回委員会の議事概要に記載されています。
「訂正した資料」を示してください。 - (4)
- 上記の副社長の弁明にある「現在の技術基準(発電用火力設備の技術基準の準用)どおり実施」は、平成16年9月5日付の社内文書でも「技術基準の厳格な適用」を美浜発電所に指示している」とのことでした。9月5日付の社内文書の題名および該当部分を示してください。
- (5)
- 「念のために取り替える」という10月8日付文書は美浜発電所が作成したものだとのことでした。美浜発電所に対し、何らかの処分又は注意をされたのですか。そうであるならば、その文書名と内容を明らかにしてください。処分や注意を行っていない場合は、その理由を示してください。
材料の実績値(ミルシート)」を用いた配管管理の「健全性評価」について
貴社の回答は、「当該材料の実績値」の使用について、「技術基準で明記されていないものでも健全性の証明が可能」「(平成12年に行われた火力発電の)性能規定化の趣旨を踏まえて、保安院が書いているが、技術基準の別表(許容応力表)によらない方法でもよい」。ただし、「管理指針、手順を定めずに『実績値』を用いて判断したことが不適切、と9月6日開催の国の事故調査委員会(第4回)資料に記載されている」とのことでした。
- (1)
- 「管理指針、手順を定めていないことが不適切」という保安院の主張は、国の事故調査委員会の資料のどこに記載されているのか、示してください。
- (2)
- 「技術基準の別表を使用せずに、『当該材料の実績値』を用いた」配管の評価を行ってもよいとの保安院の見解は、どの文書で明記されているのか示してください。
- (3)
- 美浜原発で、ミルシートを使用して計算した具体的例を示してください。例えば、美浜2号機の主給水管枝管(スケルトン番号25─5)の場合、ミルシートの実機材料データに基づく計算では計算必要厚さは15.87ミリとなっています。この計算必要厚さを導いた計算式を示してください(実機データの値等を含めて)。
3.「発電用火力設備の技術基準の解釈について」第4条第1項第1号の「ただし書き」の適用について
貴社の回答は、「発電用火力設備の技術基準は、平成12年に性能規定化された。具体的に、何ミリの厚さを要求する規定ではない法体系になっている。条文には原子力に適用してはいけないとは書いてなかったため使った」、「今では『ただし書き』を原子力に適応したことは不適切だと認識している」とのことでした。
- (1)
- 平成12年に性能規定化された「発電用火力設備の技術基準」が、原子力発電設備にも「性能規定化」の内容で適用できるという解釈は、保安院から承諾されているのですか。
承諾されている場合、保安院にはいつ承諾を求めたのですか、また保安院の回答内容はどのようなものであったのか明らかにしてください。 - (2)
- 貴社は、この「ただし書き」を使って、最小許容肉厚の算定式で、許容引っ張り応力を1.2倍し、分母が大きくなった分だけ、最小肉厚を薄く導きだしました。そのことによって配管の余寿命を引き延ばすという、悪質極まりないやり方法を使っていました(別紙算定式参照)。
これについて、国の第3回事故調査委員会議事録で、保安院の梶田検査課長は「このただし書きは、火力発電設備の場合には負荷変動運転をいたしますので、通常の運転時に比べて、年間数時間ないしある一定時間、数パーセントのある限定された時間は負荷を上げて運転をします。その際には当初の応力を超えて配管に圧力がかかるわけですけれども、そういう一時的な負荷の増強はやむを得ないという趣旨で設けられたものでございまして、一時的に余分に発生する負荷に応じて配管を薄くすることができるというような矛盾した解釈は当然とれないというのが当院の解釈でございます。したがいまして、この関西電力のただし書きの適用は間違っているというふうに当院としては判定をいたしております。」と述べています。
このように、最小許容肉厚の算定式で、許容引っ張り応力を1.2倍することは誤ったやり方であると認めますか。
- 貴社は、火力の「ただし書き」を適用したのは、「条文を適用しただけ」、「余寿命を延ばすと意図はなかった」と何度も繰り返しました。「ただし書き」を適用して評価した配管で、余寿命が2年以上の配管部位は何箇所ありましたか。
4.高浜4号の曲げ加工配管について
高浜4号のスケルトン番号12─2(第1段階湿分分離過熱器加熱蒸気管 45°管)では、製造時の曲げ加工によって、曲部外側が薄くなっているため、次回定検では余寿命1年であるにもかかわらず、取替ではなく測定実施とのことでした。また、この配管肉厚は製造公差の範囲内で規格におさまっているとのことでした。
- (1)
- 製造規格を公差を含めて示してください(●ミリ±●ミリという形で)。
- (2)
- この部位の「肉厚測定部点検結果整理表」を示してください。
5.美浜1号のフランジ腐食等について
美浜1号のスケルトン番号56─3(給水ポンプ吸込管)を第19回定検(2002年9月)で取り替えたのは、オリフィス・フランジに腐食があったためとのことでした。また、配管取替前の測定は1998年で余寿命100年とのことでした。
- (1)
- 1998年測定時の配管測定値(最小測定値)はいくらですか。
- (2)
- 1998年以前に測定実績があれば、測定日時、最小測定値、余寿命評価について、全て示してください。
- (3)
- 美浜3号の破断箇所の近傍で、フランジの腐食やオリフィスの摩耗等によってフランジやオリフィスを取り替えたことはありますか。取り替えたことがある場合は、その時期を示してください。
6.配管の肉太り、余寿命999.9年問題について
- (1)
- 配管の肉厚が前回より大きくなる(肉太りする)のは、測定位置が異なっているためとのことでした。異なった測定位置で肉厚を計った場合、そこから導き出される減肉率は意味をもつのですか。
- (2)
- 測定位置がずれる理由として、配管の防錆加工を何年かでやり直すため、マーキングの位置がずれるとのことでした。防錆加工はおよそ何年に1度行うのですか。
- (3)
- 余寿命が999.9年等の場合、その配管が1000年使えるという意味ではなく、減肉傾向がないという意味だとのことでした。高浜4号第15回定検では、下記部位を含め余寿命999.9年の配管部位がいくつか存在します。下記の配管部位について、測定時期、測定最小値、余寿命の履歴を示してください(複数回測定の場合は、測定した全ての数値を示してください)。
[1] スケルトン番号504─3 A主蒸気 管台
[2] スケルトン番号504─3 A主蒸気 下流管
[3] スケルトン番号506─8 C主蒸気管 下流部
[4] スケルトン番号514─2 B主蒸気管(C/V内)下流管
7.大飯3号のスケルトン番号14─4配管部位について
大飯3号の主給水系オリフィス下流部であるスケルトン番号14─4部位は、美浜3号機事故後の測定では、余寿命3.4年と評価されています。また、同じ時期に測定されたスケルトン番号13─5は余寿命4.1年と評価され、次回定検で取替となっています。
- (1)
- スケルトン番号14─4部位はすでに取替を行っているのですか。この部位について記載されている資料を示してください。
以上
2005年2月10日
別紙
2004年8月27日 第3回事故調 資料3−1−4← PDF 64KB 別添2 “発電用火力設備の技術基準の解釈について” の「ただし書き」問題について]より
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